『走れ、走って逃げろ』(ウーリー・オルレブ作、母袋夏生訳、岩波少年文庫)を読んだので感想です。
『走れ、走って逃げろ』は、第二次世界大戦中のポーランドを舞台に、8歳のユダヤ人少年スルリックがナチスの迫害を逃れ、過酷な放浪生活を生き抜く実話に基づいた物語。
感想としては、8歳という幼さで想像を絶する試練に立ち向かうスルリック(後にユレクと名乗る)の姿が胸を打ちました。
スルリックが家族と生き別れ、ユダヤ人であることを隠すために名前を変え、キリスト教徒として振る舞う過程は、戦争が子どものアイデンティティや記憶を奪う残酷さを浮き彫りにします。特に、片腕を失う事故や、捕まるたびに逃げ続ける彼の精神的な強さと柔軟さに驚かされます。
文体は淡々としており、感情的な表現を抑えている分、過酷な現実がよりリアルに伝わってきました。
個人的には、ユレクがどんな絶望的な状況でも前を向き、適応していく姿に心を動かされます。特に、父との一瞬の再会で教えられた「生き延びる術」が彼の行動の軸となり、希望の物語として響きました。
調べたら映画化(「ふたつの名前を持つ少年」)もされているので、今度見てみたいと思います。