夕刻の空が赤くなる美しい時間に大きな川がある町を訪れました。白を基調とした人工的な橋がかかり、そこを人々が行き来する姿を見ながら河川敷に降りて、ボーッと水辺を眺めてみました。流れはとても緩やかで心が洗われるような気分が心地よく、ずっとここに佇んでいたいと思ったものです。そんな風景を見ながら、以前観た一本の映画を思い出しました。それは波瀾万丈な女性の一生を描いた小説を映画化したものでした。心にグッとくる物語で小説も映像作品もどちらも私のお気に入りとして記憶に刻まれています。特にミュージカル仕立てで進む映画は、スリリングでかつ情熱的な素晴らしい作品でした。印象に残っているのはラストシーンに登場するヒロインが育った町を流れる川でした。大きく緩やかな線を描くその流れからは美しさと切なさを垣間見ることができて、まるでヒロインの人生のように感じたものです。この作品に出会ってからというもの、川のある風景の心地よさを知り、水辺を見つけると立ち寄るようになりました。
あれから何年もの月日が経ちましたがこの物語は私の心に深く刻まれ、時として自分の生き方に照らし合わせることもあります。そんな時には決まって水の流れる風景が頭をよぎり、懐かしい気持ちにさせてくれるのでした。それは私のささやかな宝物として心の奥にしっとりとあり続けています。