心が温まることって素敵だと思います。殺伐とした気持ちがずっと続いてしまうことは、まるで雨雲がひしめく空のようにどんよりとしてしまい、心にも体にも良くないことだからです。
数日前から読み始めた本には、ほんわかするエピソードが詰め込まれていて、読んでいるとちょっとした幸せを味わうことができることを実感しています。
元芸能人の青年は自らが招いた小さな過ちから仕事を続けることが困難になり、行きついたところは夜中に営業する定食屋でした。そこは30台半ばの男性が切り盛りする小さな店ですが、美味しい料理を味わうためたくさんのお客が足を運ぶ場でもあるのです。端正こめて作られた栄養バランスがとれた品を心待ちにしているお客さんも多く、読者の私も訪れてみたいと思うほどでした。
何よりもこの小説の魅力は青年と店主との心通った会話にあります。料理を通してまるで子弟関係のような絆が生まれ、芸能界を追い出された男性もいつしか自信を取り戻して行きます。また関西弁の会話からは人情を感じることができ、そこもこの作品の魅力だと思いました。
どんなに辛くてどん底にいても、一筋の光のような出会いはあるもので、それを知る者は強くなれるのだと知りました。そんなほっこりする物語と出会えたことを嬉しく思いつつ、優しい気持ちになる自分を感じるのでした。