家族とは生まれて初めて人間関係を築く場所です。そのことに気付いたのは年を重ねてからでした。またこうしたことを真剣に考えるきっかを作ってくれたのは今まで出会ってきた小説や映画だと思います。奥が深く濃厚な作品達は家族というコミュニティで葛藤しながら生きる人々の姿を鮮明に私の心に焼き付けてくれました。そしていつまでも色褪せることなくずっと胸の中にあり続けています。
先日読んだ作品に思春期を皮きりに父の事業や仕事に反発してきた男性が主人公の小説があります。お互い長い間会うことはなかったのですが、父が病に倒れたことをきっかけに再開を果たします。心は通い合わずにすれ違ってはきましたが、この親子は憎しみ合うという形をとりながらもお互いを必要としていたことをこの小説は描いていました。そんな二人が現実とは異なる世界で出会い、過去の出来事を振り返りながら旅をしてゆきます。その旅はほろ苦くもあり気持ちを前向きにしてくれるものでした。また確執を少しずつ解消してゆくことは、この男性を大きく成長させる糧になり、自分の家族に対する意識にもよい変化をもたらしました。
「幾つになっても親は親、子は子」と言います。この小説は親と子の絆は繊細だけれど強くて太いパイプのようなものだということを改めて気付かせてくれた素敵な作品だと思いました。