足の赴くままに訪れた街

ある日の午後、電車に乗り少し遠くへ出掛けました。郊外の街を出発して高層ビルが立ち並ぶ都会へ足を運んだのでした。車中で読書をしながらふと顔を上げて窓の外を見たら、たくさんの人々が行き交い、雑居ビルやオフィスビルが立ち並ぶ光景が目の中に飛び込んできました。その風景はとても活気を帯びていて生命力を感じたのを覚えています。そしてもう少しで到着するだろう駅は以前よく訪れたことのある古本屋や情緒ある喫茶店などが並ぶお気に入りの街だと気付いたのでした。当時古書店巡りをよくしており、購入した書籍を片手に地下にある喫茶店へ足を運び読書を楽しんだものです。そのお店のほろ苦くてすっきりとしたコーヒーの味、豆を煎っている時のにおいは私の心の中にひそやかな思い出としてずっと保存されていたのでした。そのため懐かしくなり、途中駅で下車して古本屋街を訪れたのでした。あの頃と変わらずとてもよい時間が流れていて、コーヒーの香りも健在でした。買い物を楽しみ、かぐわしきコーヒーを飲んで家路に着きました。誰しも「懐かしいあの頃」があるものです。そこを巡る機会が思いも寄らず訪れたら、足の赴くままに行動することをお薦めします。それは過去と現在を結ぶ素敵な架け橋だからです。