人の営みと自然の移り変わりから思うこと

「一年が過ぎるのはとても早い」と感じるようになったのはいつからでしょうか。年上の友達から年を取ると時が経つのが早くなると言われたことを、身を持って知るようになりつつあります。
先日読んでいた小説には、巡る季節と東京の下町で生きる女性の一年間の出来事が綴られていました。長屋で暮らす20代の女性とこの街に住む人々、家族、恋人達が織りなす暮らしは温かくて穏やかなものです。そしてふと顔を見せる別れや心の変化は私達が過ごす日常そのものだと感じました。私の日常と違うところを挙げるならば、主人公が日本文化を大切にしていること、季節毎におこなわれる下町のお祭りや食べ物を楽しみ味わっているところでした。それらを女性ならではのしっとりとした感情で見つめているところに、色っぽさと艶やかさを抱いたのでした。
物語の中で最も心に響いたことは、昔の恋人の死と今を共に過ごす男性との時間から、生きることの大切さを考えさせられたことです。この世に命ある者は日々変化が訪れ新しい出会いがあるものです。それは四季と供に移り変わる自然の営みとどこか似ていると感じます。お正月におせち料理を食べる事、十五夜には中秋の満月を見ること、美しい満開の桜を眺めることは生きているから味わうことができるものだと思います。時間がアッという間に流れてゆこうとも、来年があるからなどと思わずにその一瞬一瞬を大切に生きてゆけたらいいとこの小説を通して感じたのでした。